この映画レビューは、ネタバレを含みません。ただ、こんな映画だった、というあらすじは書かれています。
皆さんは、無声映画って観たことありますか?
文字通り、俳優の声が入ってない、映像だけ(+音楽)の映画です。
数日前に、『何が彼女をさうさせたか』という1930年代の無声映画を観たのですが、
無声映画、発達障害の色んな特性に優しくてすごく良いな
と思いました。
発達障害の人は特に、映画を観るときに色んなしんどさがあると思うので、
無声映画、という選択肢があるぞ
ということを、この映画のレビューとともにお伝えしていきます(・ω・)ノ
特にこんな人におすすめ!
- 入ってくる情報量が多いとキツい人
- ペースを乱されるのが苦手な人
- ストーリーや状況理解が苦手な人
ちなみにこの記事は、
前半…映画のレビュー
後半…発達障害に無声映画がおすすめの理由
となってるので、気になるほうだけ読んでもらってもOKです!
『何が彼女をさうさせたか』
概要
まず、『何が彼女をさうさせたか』という映画について。
- 監督:鈴木重吉
- 主演:高津慶子
- 公開:1930年
- 時間:78分
戦前の日本で異例の大ヒットとなった、日本の無声映画の代表作です。
タイトルの「何が彼女をさうさせたか」は当時の流行語にもなりました。
日常でも使いやすそうなセリフだよね。流行語になるのもわかる(笑)
ちなみに、教養として観ておくべき映画、というのを解説した伊藤弘了さんの本があるんですが、
この本の「世界と日本の名作映画111選」リストにも、この映画は入ってます。
教養として色んな映画を観ておきたい、という人にもおすすめ!
ちなみに私は、普段から日本の古い映画をよく観るので、Amazon Primeがおすすめしてくれた。それで観た
あらすじ
映画のあらすじもご紹介しますね。
14歳の中村すみ子は、叔父の住む村を目指して歩いていく。
貧しい父に代わり、叔父の元で暮らして学校に通わせてもらうためだ。
でも、叔父の家ですみ子は邪魔もの扱いをされ、学校に通うどころか、まともな食事もとらせてもらえず…。
純粋で健気、でも運の巡り合わせが悪く、不幸な境遇にばかり合う、ヒロインすみ子ちゃんの人生の物語です。
右が、ヒロインすみ子ちゃん。
たれ目に下がり眉で、「つらい境遇にじっと耐える少女」がめちゃくちゃビジュアルに合ってる美人さんです。
ちなみに左は、映画冒頭で、空腹で倒れそうになってるすみ子ちゃんを助けてくれた土井老人。
この映画で数少ない、優しい大人だった…( ;∀;)
無声映画でも楽しめる?
そもそも無声映画を知らない人は、
声なしで、ストーリーってわかるの??楽しめるの??
と思うかもしれません。
大丈夫です。楽しめます。
基本的に映画は、
映像がしばらく続く(音楽はあり)
↓
文字だけの画面を差し込む ★
↓
映像がしばらく続く
この流れで進んでいきます。
この★の部分で、今登場人物が喋ってる台詞や場面の状況を、文字で説明するんです。
この映画の冒頭シーンであれば
土井老人に進められて、どんどんご飯を食べるすみ子ちゃん(映像)
↓
“いったい何処へ行くんだね” (文字だけ)
↓
土井老人が喋ってる(映像)
↓
“新田の町に伯父さんがいるの”(文字だけ)
↓
すみ子ちゃんが喋って、嬉しそうに手紙を見せる(映像)
こんな感じです。
なので観ている人は、映像を観ながら
こういうことが起きてるんだろうな~
と想像しつつ、
途中で挿入される字幕で、細かいストーリーを理解する。
という形になります。
無声映画が主流だった頃の日本では、映画館に「活動弁士」という、横で映像の説明をしてくれる解説者がいました。
なので、字幕はありつつも、さらに細かい部分を活動弁士が説明してました。
いまの時代に無声映画を観る場合、活動弁士つきの映画館はめったにないので、字幕に頼るしかないね。
見どころ
『何が彼女をさうさせたか』のおすすめポイントですが、個人的には
無声映画ならではの映像の面白さ
を楽しんでほしいです!
映像に音がない分、わかりやすくするために、俳優の動きや表情を大げさにしたり、色んな工夫がされてるんです。
ちょっと舞台や劇に近い感じですね。
この映画の場合、
その大げささにユーモアを入れてくるんです。
なので、すごくシリアスなシーンでも、俳優の表情や動きとかが、いちいち面白いです。
主人に怒られたときの脇役の召使いの表情とリアクションとか、
芸人顔負けのものすごい顔芸が見れますwwww
あと、この映画、悪い大人がいっぱい出てくるんですが、
みんな顔つきとか表情が、ものすごい嫌なやつなんですよね(笑)
音とかなくても、こいつまじで嫌なやつなんだろうな、がすぐにわかります。
よくこんな、いかにも悪そうな顔(ができる俳優)を集めたもんだ、と感心します。
音がないからこその色んな工夫、というのが楽しめておすすめ!
無声映画が発達障害に優しい理由
次に、無声映画は発達障害の特性に優しい、というところなんですが。
実際に観てみて、特にこんな人に無声映画は良いな!と思いました。
こんな人におすすめ
- 入ってくる情報量が多いとキツい人
- ペースを乱されるのが苦手な人
- ストーリーや状況理解が苦手な人
それぞれ説明していきますね。
情報量が少ない
発達障害に優しいポイントの1つ目は、
普通の映画よりも情報量が少ない
ということです。
発達障害の人の中には、映画を観てると
入ってくる情報量が多くてキツくなる・しんどくなる
っていう人、いると思うんです。
- 映像がどんどん目に入ってくる(色んな色・形・動き・モノ)
- 音がどんどん耳に入ってくる(声・音楽・自然音)
- ストーリーがどんどん進んでいく。変わっていく状況を理解しないといけない
ということで、とにかくグワーーーーーーーーーっと情報が押し寄せてくるのが、映画です。
このグワーーーーーーーに身を委ねて、作品の世界にどっぷりハマる。が、映画の楽しさと感じる人も多いとは思う。
ただ、
大量の情報量を処理するのが苦手。
たくさん情報が一気に入ってくると混乱する。
こんな特性の人には、ちょっときつい部分もあります。
そこで、無声映画!というわけです。
無声映画
人の声(生活音や自然音も)がない分、耳に入ってくる情報量が少ない
⇒情報量が多いのが苦手な人でも、しんどくなりにくい!
例えば、『何が彼女をさうさせたか』の最初のほうの場面で、すみ子は叔父の家を訪ねます。
この家が、貧しくて子沢山。
- 狭い部屋にたくさんの子供が走り回る
- 赤ちゃんが泣いてる
- 叔父と叔母が夫婦喧嘩を始める
という騒がしいカオスっぷりです。
普通の映画であれば、これが全部音になって飛んでくるわけですが(キツイ!)、
無声映画の場合、どんなに騒がしい場面でも、音の情報がほぼありません(BGMの音楽だけ)
なので、
- 映像がどんどん目に入ってくる(色んな色・形・動き・モノ)
- 音がどんどん耳に入ってくる(声・音楽・自然音) ←★この部分がない!!
- ストーリーがどんどん進んでいく。変わっていく状況を理解しないといけない
入ってくる情報量が少ない分、観ていてもだいぶ楽に感じます。
しかも、途中で字幕だけの映像を挟むから、いったん落ち着くこともできる!(笑)
自分で考える余地がある
発達障害に優しいポイントの2つ目は、
自分で考える余地がある
ということです。
映画って基本、
- ストーリー
- 登場人物の感情
- 映像・音
こういうのを一方的に与えられて、観客はそれをそのまま全部受け入れる
というものが多いと思います。(すごく受動的)
ただこれって、完全に自分のペースの主導権を映画側にとられるので、
ペースを乱されるのが苦手な人にはキツいことがあります。
私は完全にこのタイプ。どんなに面白い映画でも、少しだけ苦手に感じる(*_*)
無声映画の場合、
いま何を言ってるのかな~
どんな音なのかな~
というのを自分で想像したり、色々考えながら、映画を観ることができます(というか、そういうもの笑)
なので、
映画に完全にペースを奪われない。
自分で考える余裕がある=自分のペースが少しキープできる
というのが、非常に良きでした(/・ω・)/
無声映画
音がないので、自分の頭で考えながら映像をみる
⇒映画に完全に主導権を奪われない。自分のペースが少しキープできる!
わかりやすい
発達障害に優しいポイントの3つ目は、
ストーリーや映像がわかりやすい
ということです。
前半にも書きましたが、無声映画は音がない分、なるべく分かりやすくするような工夫がされてます。
なので、
- 映像から状況を把握するのが苦手
- よくストーリーがわからなくなる
こんな人でも、安心して観ることができます!
例えば、普通の映画だとよくあるのが、
(登場人物が見つめ合う)
↓
(何か少しだけ喋る)
↓
(意味深な雰囲気)
↓
(立ち去る)
みたいな、
空気感で察しろよ
というやつ。
声のトーンとか雰囲気で、どういう状況なのか、どういう関係性なのか、を理解しないといけない。
発達障害に限らず、こういうのが苦手な人って割といると思います。
安心してください。
無声映画(少なくとも私がみたやつ)は、こういうのが一切なかったです
・いじめられてつらい
→わかりやすくハブられる。食べ物も食べれない。じっと下をうつむく。
・結婚する
→「主婦の幸せを感じる…」の字幕
とにかく、単純明快です。
私はとくに「え、いつのまに付き合ってた??」となることが多いけど、そういうのもなかった!
無声映画
ストーリーや映像がわかりやすい
⇒映像から状況を把握するのが苦手な人でも安心!
まとめ
無声映画は、音がない映画ならではの工夫がされてて面白いので、
発達障害のあるなしに関わらず、普通におすすめです!
ただ、発達障害目線でみると
これ、すごく助かるな
と感じる点が多かったので、
普段映画でキツくなりやすい人には特におすすめしたいです(・ω・)