市川崑『犬神家の一族』映画レビュー|視覚過敏にキツすぎてもはや面白い

映画『犬神家の一族』。視覚過敏の目線でレビュー

この映画レビューは、ネタバレを含みません。ただ、こういうシーンがあったよ、という映像の見た目的なお話はあります。

先日、市川崑監督の映画『犬神家の一族』(1976年)を観ました。

めちゃくちゃ面白かったです。

何が面白かったって、

視覚過敏にハードすぎる映像ばっかりだった(@_@)

ちょっと眩しすぎる、くらいの映画であれば、もう少し考えてくれよ―――と思うんですが。

この監督がこだわって、あえてやってる表現技法が、ことごとく視覚過敏にはキツすぎる

というのが、逆に面白くなっちゃって。

やりたいことも分かるし、画期的で斬新なのも分かる。
そんな表現の仕方をするんだーという驚きもあった。

そして、

それがことごとく視覚過敏の地雷を踏んでいく

っていうのが、シンプルに自分と相性悪すぎて、

まじかこの監督wwwwww

と途中からもはや楽しくなっちゃいました。

こういう個性のある監督、いいですよね。
良くも悪くも、すごく印象に残る映画体験ができます。

観終わったあと、しばらくしたら忘れちゃう映画よりも、

どんな形であれ、爪痕を残してくる映画

っていうのが好きです。

ということで、私の『犬神家の一族』鑑賞レポにお付き合いください(・ω・)ノ

目次

あらすじ

一応先に、あらすじを紹介しますね。

製薬業で莫大な富を築いた大富豪、犬神佐兵衛がなくなった。
残されたのは、彼の遺産と、その遺産の相続人を記した遺言状。

遺言状は、決められた親族全員が集まらないと、開くことができない。

遺言状には何と書かれているのか?!
誰が佐兵衛の遺産を相続するのか?!

遺言状と遺産をめぐり、次々と怪しい事件が起きる。

そこに立ち向かう、名探偵・金田一耕助!

という、ミステリー映画です。

あの有名な名探偵・金田一耕助シリーズの中でも、特に有名なのがこの映画。

病床の犬神佐兵衛のもとに

お父様、御遺言は…!?!?

と親族一同が詰め寄るシーンから始める、

金の亡者、もとい犬神家一族の、遺産バトルの物語です。

全員遺産のことしか頭にない。開始1分からもう面白い(笑)

異常に早いカット割り

パッパッと素早く映像が切り替わる

この映画の全体を通して、

パッパッと素早く映像が切り替わる場面が、異常に多い

というのが、まずウエエエエ(*_*)ってなるところでした。

例えば、終盤に主人公・金田一耕助が犯人っぽい人と議論するシーンがありますが、

犯人(?) 0.1秒

金田一耕助 0.1秒

犯人(?) 0.1秒

金田一耕助 0.1秒

犯人(?) 0.1秒

って感じで、

ものすごい早さで、二人の顔のショットが交互に映されるんです。

ちなみに台詞自体はお互いにやりあってます。
ただ、誰が喋ってるかとかお構いなしに、ヒュンヒュンと映像を切り替えるんです。

そのおかげで、映画のテンポがすごく速く感じる!終盤の緊迫したシーンを特に盛り上げてる。

そのあと、金田一耕助が推理をするシーンでも

金田一耕助の耳 0.5秒

金田一耕助の目 0.5秒

金田一耕助の目(別角度) 0.5秒

金田一耕助の耳 0.5秒

金田一耕助の耳(別角度) 0.5秒

と、金田一耕助の体の色んなパーツが、次々と映像で切り替わって映されます。

じっくり一つの映像を撮るより、とにかくテンポよく!というのが好きなんだろうなあ

もっとすごいのが、この監督、

全く関係ない(ように見える)ショットを一瞬だけ映す、なんてこともやります。

金田一耕助が関係者から、亡くなった犬神佐兵衛の過去について話を聞く場面。

金田一耕助が関係者と話している

(よくわからない映像) 0.5秒

金田一耕助が関係者と話している

(よくわからない映像 その2) 0.5秒

金田一耕助が関係者と話している

といった具合に、

その時点では、観客には何かわからない(けどあとから意味がわかる!)映像を、一瞬だけ差し込む

なんてお洒落なことをやっちゃいます。

初めて観たときは、はにゃ?ってなる(笑)

これが監督のこだわり

最初のほうは、パッパッと映像が切り替わるたびに、

もう何なんだよ!!無駄にチカチカさせるなよ!!

と思ってました。

チカチカする映像は気持ち悪い((+_+))

ただ、後半にかけてこういう映像がさらに増えてきて、

意味のわからない映像を一瞬だけ差し込んできたあたりから、

あ、これがこの監督のこだわりなのねww
めちゃくちゃ意図的にやってるのねww

と理解しました。

特にこだわりや意図もなく、無自覚に視覚にキツい映像にされると、イラつきます。

でも、

めちゃくちゃこだわりをもった結果、視覚にキツい映像になってるなら、受け入れます(笑)

単純に、私には合わなかったというだけのことなので。

ちなみに、こういう素早く映像を切り替える技は、

コン・タッチと呼ばれる、市川崑監督の代名詞らしいです。

この独特なカットつなぎにハマる、熱狂的なファンも結構いるらしいです。

(代名詞にもなってる映像手法が、視覚過敏にキツすぎるのは相性悪すぎて笑っちゃう)

カットつなぎ
ショット(映像のスタートからストップまで)を編集して、つなぎ合わせること。
この映画でいうと、パッパッと映像が切り替わる、この一つ一つの映像がショット。
これのつなぎ方が、市川崑はすごく独特だということで有名。

何度も同じシーンを撮影し直してる

余談ですが、市川崑監督、この素早い映像の切り替えをするために

何度も同じシーンを、色んな角度から撮影し直したそうです。

金田一耕助と犯人(?)が議論するシーンについて、金田一耕助役の石坂浩二さんは、

石坂浩二「あのくだりは、いろいろなアングルで頭から終わりまで何度も通して撮ったんですよ。(中略)あのシーンは、五、六ヶ所から撮ったと思います。移動車も使いました。」

新潮文庫「市川崑と『犬神家の一族』」2015

こんなことを言っています。

OKショットを5回も6回も撮らないといけないの、演じるほうは大変だな…汗

いよいよ、この素早い映像の切り替えにものすごいこだわりを持ってたことが分かりますね。

その他の監督のこだわり

モノクロ映像

他にも市川崑監督、面白い映像を使ってきます。

中盤の犯行シーンを回想する場面では、

急にモノクロ映像になります。

それも、昔の映画みたいな普通の白黒映像じゃなくて、意図的にカラーを白と黒で塗りつぶした、みたいなスタイリッシュなやつ。

めっちゃお洒落でかっこいいんですが、

このモノクロ映像の白部分が眩しすぎてキツいwwww

せめて白の彩度を下げてくれええええええ(それだとスタイリッシュさが失われるんだろうな)

残像ありのスロー映像

そしてまた別のところ。
明かされる犬神家の衝撃的な過去!の回想シーンでは、

映像がめちゃくちゃスローモーションになります。

しかもただのスローではなくて、人の動きの残像を残してるので、

映像がブレブレでグニャングニャンに見えます。

めっちゃ気持ち悪い(笑

衝撃的なシーンを、あえてスローで見せることで、不気味さを演出しているわけですが。

私が観たときは、別の意味で

いやあああああああああキツーーーーーー(気持ち悪!)

となりました。

この監督に限らずですが、

スタイリッシュでおしゃれな映像って、視覚にキツいものが多いですよね。

おわりに

市川崑監督、けっこう好きでした。

熱狂的なファンがいるのも分かるなあ。

という独特のテンポ感、リズムの良さ、そしてスタイリッシュな映像。

そしてそれが全部視覚過敏にキツい、という落ちも含めて、楽しい映画体験でした(;・∀・)

あといくつか、作品観てみます!

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